「ごはん、何時にする」と聞いて、返ってきたのがため息だけだった夜がある。
何か言ったわけでもないのに、空気がすっと重くなる。
夫の様子が変わってきたと思いはじめたのは、そのくらいの時期だった。
前は笑って流していたことに、急に声を荒げる。
かと思えば、何を聞いても「別に」しか返ってこない日が続く。
わたし自身も更年期の波のなかで2度休職して、いまは復職して働けるところまで戻ってきたところ。
落ち着いてきたとはいえ、あの頃のどうにもならなさは覚えているし、また来たらと身構えることもあるの。
だからここに書くのは、男性の体の説明でも治療の話でもなくて、妻のわたしが家の中でやめた声かけと、そのあとどうなったかという記録。
返事の代わりに、ため息が返ってくる時期があった
変わったのは、たぶんお互いさまだった
最初に書いておくと、あの時期に変わっていたのは夫だけではなかった。
わたしのほうも、自分の不調で余裕がなくなっていた。
夫のため息にいちいち反応して、こちらから空気を悪くした夜もある。
あとから思い返すと、どっちが先だったかなんてわからないの。
仕事から帰ってきて、玄関で靴を脱ぐ音だけで今日の機嫌を読もうとしていた時期もあった。
そんなふうに人の様子を読み続けるのは、それだけで消耗する。
夫を悪者にしてしまえば話は早いけれど、それをやると次の日の自分が余計につらくなるとわかっていたよ。

わたしのほうにも、余裕がなかった
「なんでそんな言い方するの」と、言い返してしまった日が何度もあった。
そのたびに、家の中の空気が2日くらい戻らない。
言い返した瞬間はすっとするのに、寝る前になると必ず後悔するの。
自分の体調が悪い日ほど、こちらの言葉がとがっていたと思う。
相手を変えようとするより、自分の口ぐせを変えるほうが早かった
だから直そうとしたのは夫ではなくて、わたしの側の口ぐせのほうだったよ。

わたしがやめた3つの声かけ
1つめ:「どうしたの」と理由を聞くのをやめた
機嫌が悪そうなときに理由を聞くのを、まずやめた。
心配して聞いていたつもりだったけれど、相手からすると問い詰められているように聞こえていたみたい。
それに、聞かれた本人も理由がわかっていないことがある。
わたし自身、なぜイライラしているのか説明できない日があったから、その気持ちはよくわかるよ。
理由を言えないことを責められている気がして、余計にとげとげしくなる。
いまは、聞かずに麦茶だけ置いて別の部屋に行く。
話したくなったら向こうから来るし、来ない日はそれでいい。
何も聞かない日のほうが、夜になって普通に会話ができることが多かったの。
2つめ:「病院に行ってみたら」を毎回言うのをやめた
気になることがあるなら診てもらったら、と何度も言っていた時期がある。
悪気はなかったのだけれど、毎回言われる側はしんどいと思う。
だから一度だけ、落ち着いている日に伝えて、そのあとは言わないことにした。
同じことを言うのは一度だけ、と自分の中で決めておく
決めるのは本人だから、こちらは言ったという事実を置いておくだけにしたの。

3つめ:「前はこうじゃなかったよね」をやめた
これがいちばん効いた。
前と比べる言い方は、こちらにそのつもりがなくても責める形になる。
「昔はもっと笑ってたのに」も同じで、口にした瞬間に空気が固まるのがわかる。
わたしも、休職していた頃に以前の自分と比べられる言葉がいちばんこたえたから、やめようと思えたの。
比べるのをやめてみたら、こちらの気持ちも少し軽くなったよ。
いまの相手と話すほうが、思い出の中の相手と話すより、ずっとラクだった。

代わりに、いま続けていること
用件だけ、短く伝える
話しかけるときは、用件だけ短く伝える形にした。
「今日は19時にごはん」「日曜は出かける」。
前置きも説明も付けない。
説明を足すほど、こちらの言葉が言い訳っぽくなって、返事が重くなるとわかったから。
返事を待たない
用件を伝えたら、返事を待たずに部屋を出るようにした。
その場で返事をもらおうとすると、どうしても顔色を見てしまう。
あとから「わかった」とだけ返ってくることも多いよ。
返事をその場でもらおうとしないだけで、家の中の空気がずいぶん軽くなる

自分の予定を先に決める
相手の機嫌に合わせて自分の予定を決めるのを、やめた。
土曜の午前は買い物、日曜の夕方は電話、というふうに先に埋めておく。
自分の予定が決まっていると、相手の様子に振り回される時間が減るの。
残暑の夕方に、ひとりで近所を10分歩くだけの予定でもよかったよ。
外の空気を吸って戻るだけで、家の中の重さが自分の全部じゃなくなる感じがした。
週に2回くらい、その10分を入れておくだけで、月曜の朝の気分が違ったの。
わたし自身が家族にイライラをぶつけてしまったときの立て直し方は、イライラを家族にぶつけた日の記録 に別で書いてあるよ。

うまくいかない日も、いまだにある
言い返してしまった夜のこと
決めたはずなのに、言い返してしまう夜はいまでもある。
疲れている日ほど、こちらの言葉が短くとがるの。
そういう日は、夜のうちに片づけようとしないで寝ることにしている。
朝になると、なんであんなに腹が立ったのか思い出せないことも多いから。
距離をとるのは、冷たいことじゃないと思うことにした
別の部屋にいる時間を増やしたとき、少しうしろめたさがあった。
避けているみたいで嫌だな、と思っていたの。
でも、離れている時間があるほうが、顔を合わせたときにやさしくいられた。
夕食のあと1時間だけ別の部屋で過ごす、という形に落ち着くまでに半年くらいかかったよ。
いまは、距離をとるのは相手を大事にする方法のひとつだと思っているの。
同じ家にいるからといって、同じ部屋で同じ時間を過ごさなくてもいいんだよね。

よくある質問
夫のイライラが強い日、どうやり過ごしている?
用件だけ伝えて、あとは別の部屋にいるよ。
その日のうちに話し合おうとすると、たいていこじれるから。
翌朝に短く話すほうが、うまくいくことが多かった。
言い返してしまったあと、どうしている?
その夜は追いかけない。
次の日に「昨日は言い方がきつくなってごめん」とだけ言うようにしているよ。
理由の説明はつけない。
家族の前ではどうしている?
人がいる場では、いつもどおりの用件だけにしている。
第三者の前で相手の様子に触れると、あとで家の中に持ち帰ることになるから。
自分の不調と重なった時期はどうしていた?
重なった時期は、家事の基準を下げて、両方の予定を減らした。
どちらかが我慢する形にすると続かないから、まず家の中の用事そのものを減らしたよ。
夕飯を作らない日を週に2回つくって、それを最初に宣言しておいたの。
相手に何も伝えないままでいいの?
伝えたいことは、落ち着いている日に一度だけ伝えるようにしている。
毎回言わないと決めているだけで、何も言わないわけではないの。
まとめ:やめた言葉のぶんだけ、家の中が静かになった
やめたのは3つだけだった。
理由を聞くこと、毎回すすめること、前と比べること。
どれも、心配だから言っていた言葉ばかり。
それでも、言われる側にとっては追い詰める言葉になっていたと思う。
代わりに、用件だけ短く伝えて、返事を待たないで、自分の予定を先に決める。
それで全部が解決したわけではないけれど、家の中の空気が重くなる回数は確実に減ったよ。
わたしのほうにも余裕がなかった時期だからこそ、口ぐせを変えるところから始めてよかったと思っているの。

